うどんが食べたくなるといつも思い出す事です｡もしよければ､聞いて言ってください｡…

うどんが食べたくなるといつも思い出す事です｡もしよければ､聞いて言ってください｡

私は小さい時から祖父母と暮らしていました｡
祖父は子どもや動物が好きで､私達孫の事をめいっぱい可愛がってくれました｡仕事が休みの日には祖父の友達の家へ行き馬を見たり乗ったりするのが祖父と私の楽しみでした｡仕事も大好きで､動いていないと落ち着かないという人だったので定年してからはずっと家の家事や家の修繕などを毎日していました｡車を運転することが何よりも好きで､私や妹の学校の送迎もしたがり毎日してくれたくらいです｡必ず学校帰りは少し遠回りをしてドライブをして帰るのが当たり前でした｡私は祖父の作る料理でうどんが一番好きでした､いえ､家族､親戚皆､祖父のうどんは本当に美味しいという程です｡
祖父は美味しいと言われる度に作る量が増えて2日かけて皆で食べたくらいです｡
病気一つしなかった祖父は74歳をむかえました｡背中が痛いとずっと言い続けていて祖母も心配して病院へ行こうと言いました､しかし祖父は首を横に振り､私の妹が今年中学校に入学するまでは安心できないと言って病院には行かなかったんです｡どれだけ言っても祖父は頑なに断りました｡しかし､次第に祖父の体調も崩れていって寝ている状態が多くなっていたんです｡そして､やっと妹も中学校へ入学しました｡病院へ行くとお医者様からは白血病と伝えられました｡今年いっぱい持つかどうかと伝えられ輸血などの治療も行いましたが病は祖父に住み着いたままでした｡抗がん剤治療は歳も高齢という事で受けることが出来ませんでした､私は日に日にやせ細っていく祖父を見ると涙が止まりませんでした､でも母からおじいちゃんの前では絶対に泣かないようにしよう､笑顔でいようと言われていて､トイレに行くふりをして泣いていました
都市も終わりに近づいてきた頃､祖父は医者も驚くほどの回復を見せました｡おかげで､年末は家に帰って皆で年を越すことが出来たんです｡
でも､歳を越してお正月も終わった頃です､回復したと思われていた病が顔を出したんです｡それから前のように入院生活が始まり､祖父が幻覚を見始めました｡祖父にもそれが幻覚だとわかっているようで嫌だな…と呟きながら泣いていました｡地元にいる親戚達全員で祖父のお見舞いに来て楽しく祖父も話をして皆で帰る時です､エレベーターまで祖父が見送ると言ったのですが私達は断り､帰ろうとした時､私は病室に上着を忘れたことに気がつき戻りました｡上着を取りに行くと祖父は笑顔で上着を私に渡してくれ力強く私の手を握りしめました｡お前なら大丈夫だ､そう言って私を送り出してくれたんです｡それが私は祖父を見た最後でした｡次の日またお見舞いに行こうとした時､何故か私達姉妹の自転車が学校から帰ってくる時に2人当時にパンクしていたらしくその日は行けませんでした｡その次の日､親戚一同呼ばれ祖父はかろうじて息をしている状態でした｡学校が終わり急いで駆けつけた私は祖父の手を握ると祖父は目を開き私を見て涙を流し息を引き取りました｡享年75歳でした｡祖父のお葬式にはたくさんの人が集まってくれ､会場には入りきらない程で､祖父人間の良さが伝わりました｡今でも祖父のうどんが食べたくなります｡レシピを聞いておくんだったと後悔もしていますが､祖父のあの味は祖父にしか作れない物なんだとも思います｡

• 共感！0

• ウォッチリストに追加