藤岡弘さん。

藤岡さんが小学生の頃、お父様が突然失踪してしまったそうです。

以降、藤岡さんはお母様の手で育まれたそうです。

出身地、地元愛媛の高校卒業後、一旦は石油会社に就職したものの、どうしても俳優になりたくて石油会社を退職。

上京して劇団に入団。

幾多のアルバイトで生計を立てながら、ようやく松竹に入れました。

しかし松竹入社後も人気は伸び悩みました。

こうして迎えた24歳のある日、東映から仮面ライダーのオーディションの話がありました。

当時、俳優は芸能プロではなく映画会社に所属していました。

映画会社同士の協定があり、互いに他社から俳優を引き抜かないことになっていました。

そのため松竹所属の藤岡さんは、東映への移籍に苦労したそうです。

こうした中、厳しいオーディション競争に勝ち抜いて、ようやく仮面ライダーの主役の座を得たのです。

1971年4月3日の初回放映に向け、2月にクランクインしました。

4月2日、第10話の撮影中、藤岡さんは劇用車のバイクで転倒！

左脚大腿骨解放性粉砕骨折の重傷を負ったのです。

左脚太ももの骨が粉々に砕け、骨の破片が外に飛び出すという重篤な怪我です。

救急車で搬送された病院では、この重篤な疾病の治療技術はなかったそうです。

高度な治療技術を持つ病院への転院を希望したものの、当時は今のように簡単に紹介状を書いてくれたり、レントゲンフィルムを貸してくれなかったそうです。

そのため転院手続きはスムーズに進まなかったそうです。

応急処置しかできない病院のベッドでもがき苦しみながら、仮面ライダー初回放映を観たそうです。

半ば強引に転院し、本格的な治療に入りました。

お尻に穴を開け、鉄棒を大腿部に差し込み、切開した大腿部で粉々に砕けた骨の破片を鉄棒を芯にして巻き付けるように破片ひとつひとつを貼り付け、針金を巻いて固定した上で縫合したそうです。

この手術には丸１日を要したそうです。

医師からは「松葉杖や車椅子による生活を覚悟して欲しい」と宣告されました。

全治８ヶ月を要してようやく仮面ライダーに復帰したそうです。

鉄棒は手術から半年後に引き抜いたそうですが、大腿骨に巻き付けた針金は今もそのままだそうです。

藤岡さんが俳優として軌道に乗るまでには、大変な苦労があったのです。