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深夜の病棟の話。私が担当する末期癌の患者さんがナースコールを鳴らした。きっと身体…

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匿名さん
23/06/07 14:54(最終更新日時)

深夜の病棟の話。私が担当する末期癌の患者さんがナースコールを鳴らした。きっと身体を蝕む激痛に耐えきれなくなったのでしょう。急いで駆けつけると、彼女のベッドの側に小さな女の子がいた。
「なぜこんなところに子供が？」と不思議に思って話しかけようとしたが、私は瞬時に理解して後退りした。そうしてドアの前に隠れて聞き耳を立てた。
あまりよく聞き取れなかったけど、何やらお話をしているようだった。優しい笑い声が聞こえた。互いにケラケラと笑ってた。
時間にして4、5分くらい？
声が止んだのでそっと覗くと、もうその子供はいなかった。
彼女は微笑んで、安らかそうにすやすやと寝息を立てていた。

翌朝、彼女に聞いてみた。あまりの激痛に呻いてると、どこからか女の子がやって来て「痛いの？」と聞いてきた。そして患部に手を当てられると、みるみると痛みがなくなったらしい。驚いて女の子の顔をマジマジと眺めると、その女の子はなんと子供の頃の自分だった。
なんの話をしたのか尋ねたら、それは秘密だって教えてくれなかった。

でもね、私は知ってるよ。その女の子は、あなたのお母さんだよ。
なぜ分かったかは、個人のプライバシーになるのでここでは詳しくは言えない。
でも間違いない。あれは彼女のお母さんだった。私はすぐに分かった。
子供の姿になった理由は分からない。でも、お母さんはあなたを愛してたんだね。
死んでまで、あなたのことを思って気にかけてたんだね。

彼女は自分の死ぬ日を予見してた。ちょうどその日が命日になった。生憎その日は私はいなかったけど、夜中に彼女の声がふと脳内に聞こえた。「ありがとう」って。
私も「ありがとう、さようなら」って呟いた。
私にとって生涯忘れられない思い出になった。今度の休日、久しぶりに実家に顔を出しにでも行こうと思う。