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最期に見た母の姿は血まみれ
美輪氏が経験談としてこんな事を語っていました
【知り合いの青年のもとに赤紙が来ましてね、私はまだ子供でしたけど、当時、出征する時は家族から町内の人、職場の人達などが皆でお祝し、駅まで見送りに行くんですが、彼は汽車の乗り口の所で『行って参ります』と挙手の礼をしていて、お母さんは後ろの方にいたんですよ。で、汽笛が鳴っていよいよ汽車が発車するって時に、突然、後ろにいたお母様が人垣を掻き分けて息子の足にしがみついたのね。『死ぬんじゃないよ!必ず生きて帰って来なさいよ!』って言って。そしたら憲兵がお母様の襟首を掴んで『貴様〜!』と怒鳴って投げ飛ばしたの。その勢いでお母様は顔面を鉄柱に打ち付けて、血が流れたのね。その時、彼の方を見たらね、それまでピシッと挙手の礼をしていた彼が、もう何とも言えない顔をしてましてね、それで汽車は動き出して行ってしまったんですけど、彼はそのまま戦地で亡くなって帰って来なかったんですね。つまり彼が最期に見た母は、憲兵に投げ飛ばされて血まみれになった姿で、それが永遠の別れになったんですよ】
という話なんですが、確かに当時はお国の為に身を捧げる事が名誉な事であり、そこに背く者は非国民として叩かれる状況だったと思います
しかし、彼は『戦争になんて行きたくない、イヤだ』と駄々をこねた訳でもなく、母親も『うちの大切な息子を戦争になんか行かせるものか』と言った訳でもなく、国に従っていますよね
ただ、母親として息子の身を案じただけというか、ちゃんと国の指示に従って出征はするんだから、最後の見送りの別れくらい、いいんじゃないかと思うんですが…
憲兵がこんな事をしなければ、彼は血まみれになった母親の姿を最後に見なくて済んだ訳だし、母親もこんな惨めな姿を息子に晒さなくて済んだと思うんですよね
お互いにイヤな別れ方になって…
憲兵って一体何なんですか?
軍人の一種?
私は府に落ちません
こういうものだったと思うしかないんでしょうか?
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憲兵とは、警察官を兼ねた兵隊、軍人です。
軍人として国防に携わりながら、民間人の取り締まりもしていました。
当時は、「お国のために死ぬ」ことは、名誉なこととされていました。
国民は、お国のために死ぬべきものだったのです。
だから、そのお母さんのように、「死ぬな、生きて帰ってこい」というのは、国是を否定する、とんでもない考え方だったのです。
お国のために息子の命を差し出すのが立派な母親、お国より自分の息子を大切にするのは非国民、と見られたのですね。
悲しいことだと思います。
二度と、繰り返したくないですね。
腑に落ちないか…
あの頃心の奥底ではみんなそう思っていたと思うよ。
でも、それを口にできないくらい抑圧されて、口に出せば非国民になってしまう、間違ってることを間違っていると言えない、そういう辛い時代だったんだよ。
銃後を守る人間が弱音を吐くと士気が下がるからです。
当時は思っていても口に出さずに超強がっていたのですね。
憲兵はちょっとアレな人が多かったので短絡的な行動になりがちでしたが、当時も理論派や情状派の軍人もいたので、所属部隊の上司の質で大違いということもあったそうです。
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