愛を 探している。あの日からずっと、愛を探している。愛せる相手を、愛してくれる相…
愛を 探している。あの日からずっと、愛を探している。愛せる相手を、愛してくれる相手を、探している。
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「あなたは、約束の時間に遅れてくる人をどれくらいまてますか?」
人によっては、1分も待てない、30分くらいならというかもしれない。でも僕は、いくらでも待てる。たとえ、雨の日でも。たとえ、親に会わせるつもりだった恋人でも。約束の時間は13時。今は、15時。公園の時計は信用できないけれど、チャイムがなったから確実だ。すべり台に雨があたって、不思議な音がなる。近くのパン屋がガラガラとシャッターをしめる。
「柳さん..柳さあん!」
この5時間、何をしただろう。電話?メール?もちろんした。でもそれ以上連絡の手段がないことに気付いた。僕は彼のことを知っていたようで知らなかった。叫んだ声は雨にのまれて消えた。
もう何も、きこえない。
「おかえり、お兄ちゃ…?」
「ただいま、悠」
「どうした?すぶぬれじゃん。…何かあった?」
「大丈夫。ほっといて、」
悠の不安そうな表情が目に入る。本当に大丈夫なとき、人は大丈夫とは言わないと思う。大丈夫な人は大丈夫?とは聞かれないし、大丈夫な人は自分から何も言わないからだ。
自分の部屋の床に水滴が落ちる。拭くのがめんどうだなと思いながらぺたんとすわる。体操座りをして、太ももに顔をうずめる。泣く。
「辛い」
声に出したら余計に辛い。体が重い。心臓が痛い。しばらくして、母がこちらへ来る音がした。
「濡れたなら、ちゃっちゃとシャワーあびなさい、かぜ引くわよ。」
答える気力もわかなくて、無視していると、
「ん、生きてる。大丈夫ね」
そう言ってドアを開け、閉めた。柳さんがくることは、前に話した。男だってことは、まだ。
深く聞かない母の優しさが、今はただただ、苦しい。
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