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【オリジナル小説】 「死ぬためには生きなきゃいけない」  夕暮れ時の小さ…

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匿名さん
23/11/29 13:43(更新日時)

【オリジナル小説】

「死ぬためには生きなきゃいけない」
 夕暮れ時の小さな公園。由井カオリは言った。
 橙色に染まる空に鴉が数羽、羽を広げて飛んでいくのが見えた。喜怒哀楽を隠した表情に意図を掴み取れない。曖昧頷くカオルを後目に、二人が座るブランコが軋んだ。
「誰の言葉?」カオルが訊くと、「僕の言葉」「今考えた」と由井が言う。少し見上げた視線の先に、カーブミラーがあり、鏡には丁度角を曲がるトラックが一台。
「そろそろ帰ろうか」由井が言った。無感情なその言葉の意図こそ、カオルが汲めていたらよかった。信号待ちをするその時、トンッと背中を押す彼を、引き留めることが出来たのだから。
 その日、由井カオルが死んだ。
 風で舞う、由井カオリの―男にしては―長い髪が少し乱れて空へと融ける。淡い輪郭が失われていくのが見えた。喧噪に満たされた心臓の内部。鳴り止まない。もう十一月だと言うのに汗が湧き出て仕方が無かった。眼下に置かれた光景が未だかつてない昂揚を生む。頭を擡げて倒れる、そこにはかつてカオルだった人間の死体が原形を留めずに敷かれていた。頭部から飛び散る液体、千切れた手首、ぶちまけた内臓の残骸。想像をはるかに超える地獄絵図。喉を置くからこみ上げる吐き気と歓声だけがハッキリと感じ取れる。由井は壊れた人形のように打ち震え、密かな思いを持って口の両端を釣り上げた。





 今年の暑さは病的に酷い。今日も朝から三十度を超える猛暑が続いていた。聞こえるのは蝉吟と行き交う人々の溜め息。半ばヤケクソ染みた夏盛りだ。青い空に浮かぶ入道雲が憎たらしい。
照るような陽射し、地面からの放射熱。『頭が馬鹿になりそうだ』と誰かが言った。一体誰だったか。自分のような気もするし、嫌いな数学の教師かもしれない。由井カオリは息を切らし、額を拭った。汗が止まない。上下する肩、早咲きの向日葵、枯れた紫陽花、風鈴の音。それら全てを他所に呟いた。「…あッツ」
夏期講習を終えて帰路に就いていた。Tシャツ・ハーフパンツの上に軽いジャンパーを羽織って。汗が布に染みついて気持ち悪い、特に脇と腹あたりが。それでもジャンパーを脱ぐ気になれないのは、由井自身の不安感が原因だった。コンクリートの上に、黒いシミを作っていく。未だ午前。正午近くになればどれ程の人が熱中症患者として運ばれるだろう。さざめきを魅せる夏草に舌打ちをした。ここは熱帯雨林のど真ん中だと、説明された方がまだ納得がいく。タンパク質が融けるまであと半分以上温度を上昇させなければならない、序の口と言わんばかりの熱波に頭が朦朧としていく。ああ、確かにこれは、『頭が馬鹿になりそうだ』。


※1二つの作品に関連性はまったくないです。
※2この作品は私のオリジナルです。無断で複製、転載、配布、公衆送信などをすることはやめてください。
※感想は有難いですか、辛口は勘弁してください。

No.3928026 23/11/28 23:38(悩み投稿日時)

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No.1 23/11/29 03:11
匿名さん1 

毎年の事ながら最近の夏は暑いですね。十二分に水分補給を摂るようにお願い致します。ではおやすみなさい。

No.2 23/11/29 13:43
匿名さん2 

こんな掲示板に出すよりもカクヨムとか小説サイトに載せたりコンテストに応募した方がいいと思います。

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