仏教の地獄絵図には火で焼かれたり身体を切り刻まれたり水責めにされたりしている姿が描かれている。現実に爆弾で吹き飛ばされた子供達。毒親にタバコの火を押し付けられる子供。現実界の地獄である。地獄絵図で罪人を攻めている鬼は怒り怨み嫉妬に駆られた人間の姿を描いたもの。子供を虐待する親や戦争で多くの人を殺し傷ける人間が鬼。誰かに恨みを抱いたまま死ねば地獄に生まれ鬼となる。そして恨んでいた人の人生の前に立ちはだかり害をなす。これを悪縁という。恨まれていた人が恨んでいた人の子供として生まれたら、親が鬼となり子どもは苛められ毎日が地獄となる。現実の生活においても恨みや怒りや嫉妬は人間の心を鬼に変える。鬼とは他人の不幸を願う人間の姿。鬼の住む場所は地獄なので自分の生活全てが地獄へと変化していく。それは恨みや怒りや嫉妬は自分が幸せになるための合理的な正しい判断をできなくするから。したがって「許す」という行為は相手のためではなく自分のため。普通の人間が鬼になるのは、人間の内面に鬼と仏性の両面を併せ持っているから。仏性とは慈悲のこと。慈悲とは地獄に在る人に救いの手を差し伸べ、苦しんでいる人を救いたいと願う気持ち。それを実践するのが成仏の道である菩薩行。ボランティアも困っている人を助けるのも虐待されている子供を救い出すのも全て菩薩行。菩薩行を重ねることで仏性がその人の人格となる。それを「覚りを開いた」或いは成仏した（仏に成った）という。人間は生きている内に様々な罪を犯しながら生きている。その中で最も重い罪は恨まれること。そして恨み続けることも相手の不幸を願うようになるので罪となる。成仏するための善行は感謝されることだが、感謝することも善行となる。「ありがとう」と言われる行為は最も大きな善行だが、「ありがとう」と言うことも相手を幸せな気持にすることができるので善行となる。悪行と善行のどちらが多いかで極楽か地獄かが決まる。感謝されれば良縁となり生まれ変わっても助け合える存在となるが、恨まれれば恨んでいる人が悪縁となり恨んでいる人の人生の障害となる。