男は人生を間違えた。どうしてこうなったのか、ビルの屋上で悔い、神に願った。 も…

男は人生を間違えた。どうしてこうなったのか、ビルの屋上で悔い、神に願った。
もう一度やり直せるなら今度はマトモな生き方をする。神様、どうか俺の声を聞いてくれ。
悲痛な思いを抱え、絶望を抱いてこの世を去った。

闇。
気がつくと暗闇にいた。周囲に何があるのか何も感知できない。何時間、何ヶ月、何年経ったのだろう。時間という概念がない中で、その日は突然やって来た。光りが降りて来たのだ。

男は駆け出し、おーい！ここだ！助けてくれー！声にもならない声で叫んだ。

すると光は瞬時に、音もなく男の目の前に現れた。
目を凝らして見てみると、どうやら人の形をしている。性別は男性のよう。天使なのか人間なのかも分からない。

男が口を開く。すみません、あの、、、ここはどこなんでしょう？
光は答えた。あなたの人生は終わった。あなたが終わらせたんですよ。

そうだ、あの日ビルから。。。
その場でへたり込む。俺はなんてことをしたんだ！妻と子がいるのに、、
感情がゆらぎ記憶が蘇った。
そう、俺には家族がいた！どうしてるだろう、、

光は優しい声で語りかけた。あなたの家族は元気に暮らしている。ただ土地を離れたようだ。奥さんは働いて、子供は口数も少なくなったようだね。

うわーん（涙）男はこれまでにないほど泣いた。大人とは思えないほどに。

次の言葉が出て来るのにどれほどの時間が経ったのだろう。涙と鼻水とヨダレのオンパレード。くしゃくしゃになった顔を上げると光はまだそこにいた。

大丈夫かい？あなたの声は聞こえていたよ。もう一度人生をやり直したいと。

え⁈
そうだ、そう、思い出した。そんなことを願った。
もしかして聞いてくれるのですか？

光は何も答えない。沈黙が辺りを支配した。

意を決してもう一度尋ねた。あの、人生をやり直したいのですが、、、

それでも光は何も答えない。
あの、人生をやり直したいんです。

あの！人生をもう一度、お願いします！

暖かな空気が周囲を覆った。そして光は答えた。やり直すには条件がある。
男は何でも飲みますと威勢よく答えた。

そうですか。では時間を戻しましょう。そこであなたが、まだ生きているあなた自身に語りかけるのです。
もちろんあなたの声は聞こえないでしよう。姿も見えません。あなたはメッセージを送るのみ。
あなたの送るメッセージにあなたが気づき、選択を変えることが出来るなら、その世界のあなたは寿命まで生きていられます。もちろん家族とも一緒に暮らせるでしょう。
ただ、今のここへ来てしまったあなたは地上へは戻れません。しかし、あちらの世界であなたが生き続けるなら、それは今ここにいるあなたも生きているのと同じことなんです。
その役目を請け負いますか？

男は少し寂し気に、しかしせっかく貰ったチャンスに、はい！と答えた。

では、あなたにあなたを守護する役を命じます。
さあ、ゆきなさい。

その瞬間、急に辺りが明るくなり、時空が歪んだのを感じた。目を凝らして周囲を見渡すと病院らしき部屋にいた。そこには小さなベットが並べられ、生まれたばかりの赤ちゃんが泣いていた。オギャー、オギャー。

おいおい、これもしかして俺かよ（笑）

さてさて、彼は彼のメッセージを聞き取ることが出来るだろうか。



これを読んでいるあなたは、あなたのうちなる声を聞いていますか。

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