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洋子(仮名)は怖い人だった。 高校生の時、「私たち、ずっと友達でいる証しに…
洋子(仮名)は怖い人だった。
高校生の時、「私たち、ずっと友達でいる証しに同じ髪型(ショートカット)にしましょう」と、突然、洋子が提案してきた。その当時、私は髪を長く伸ばしていて、本当はショートカットになどしたくなかったが、断った後の気まずさが面倒で仕方なく髪を切る事にした。
が、翌日、学校に行って驚いた。洋子は髪を切っていなかったのだ。そして私にこう言った。
「あら、本当に髪切ったんだぁ!ずっと長い髪だったから、何か変だわね(笑)」と…
そして別の友達が来ると、洋子は、「じゃ、お先に」と行ってしまった。
置き去りにされた私は、怒りと屈辱で、暫くその場を動く事が出来なかった。
洋子のいい加減な提案を真に受けた自分が腹立たしかった。
あんな女の言う事を真面目に受け止めて、髪を切った自分が本当に悔しかった。
それでも私は洋子に文句を言えず、以降も洋子から話しかけられれば、何事もなかったかのように接した。
洋子は我が儘で気が強かった。友達も多く、クラスでも中心的存在。学校という社会の中で、彼女のような人間を敵に回す勇気は私にはなかった。
私は自分が情けなかった。
そして洋子を心の中で憎んだ。
洋子は昔から怖い人だった…
私は今でも彼女を許せない。
復讐などは考えていないが、時折、彼女の事が思い出されると、どうにも怒りが抑えられなくなる。
私がこんな思いをしているなんて洋子は夢にも思っていないだろう。私という人間の存在すら、あの女なら忘れているかも知れない。
いつだったか、洋子は私にこう言った。
「ねぇ、あんたってさぁ」とクスクス笑いながら、「反応が鈍いよね〜、ちょっとイラッとするんだけど。アハハ」と…
洋子は私を嘲笑した。
取り巻きの女子たちが洋子と一緒になって大笑いしていた。私は屈辱だった。
私は洋子が許せなかった。
いよいよ堪忍袋の尾がキレた私は、洋子の上履きを捨てるという情けない復讐をしてしまった。
面と向かって洋子に言い返す事は出来なかった。だから放課後、皆がいなくなったのを見計らって、洋子の上履きを焼却炉に捨てた。
卑怯で情けない仕返しである事は理解していたが、私にはそれが精一杯の抵抗だった。帰路、私は自分が情けなかった。
翌日、「あれ、上履きが無い!」と騒いでいる洋子の姿を遠くから見て、胸のつかえが取れる思いだった。はしたないけれども、(ざまぁみろ)と思った。
しかし、恐ろしい事が起こった。
背中をトントンとされ、振り返るとB子がいて、「ちょっといい?」と呼ばれた。
体育館裏に連れられ、私が恐る恐る「なに?」と聞くと、B子は、「洋子の上履き、焼却炉に捨てたの見たよ」と言ったのだ。
(見られていたんだっ!)
私は青ざめた。ヤバイ、どうしよう…と。
しかしB子は、「誰にも言わないから心配しなくていいよ。私も洋子にはムカついていたから」と言い、「じゃ」と教室に戻って行った。一瞬、私はホッとしたが、もしかしたらゆすりをかけられるかも知れない、チクられるかも知れないとビクビクしていた。が、卒業するまでB子がばらす事はなかった…。
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