粘土を好きな形にして命を吹き込む。 すると動き出した。 あなたは言う。幸せに…
粘土を好きな形にして命を吹き込む。
すると動き出した。
あなたは言う。幸せになりなさいと。
粘土は幸せにならなければならないと思った。
と同時に、僕は幸せじゃないのだと自らを不幸に位置付けた。
不幸である僕は何をすれば幸せになれるのだろうと考えてみた。
とりあえず走ってみる。
粘土は走る。息を切らして遠くまで走った。
しかし苦しくなるだけで幸せを感じられない。
どうすれば幸せになれるのか、ますます分からなくなった。
そこで家を飛び出し、庭を見て回った。
そこには一本の桜の木があり、根が地に伸び、ちょうど良い形で開けていた。
粘土はそこへ腰掛け、ふーっとため息を付いた。
やぁ。
どこからともなく声が聞こえてくる。
振り返ると幹が振動し、話しかけられているのが分かった。
あ、こんにちは。
君はここで何をしてるんだい?野太い声で、いや振動が伝わって来る。
僕は幸せにならなければならないんです。でも、どうやって幸せになればいいのか分からないんだ。
わーはっはっ。そうか、君は幸せを探しているのか。それは大変だな。そう言って豪快に笑うのです。
あまりの大きさに、びっくりして飛び跳ねてしまった。
うわっ!そんな大きな声で笑わないで。驚いてしまったよ。
いやーすまんすまん。ついね。
いいんです。でも何がおかしいの?
桜は大きく揺れて、一つの枝で天を指した。
空を見てごらん。
粘土は言われるがままに空を見上げた。
この青い空は何一つ文句を言うこともなく、私に光を与えてくれる。雲は日陰を作ってくれる。喉が渇くと雨を降らしてくれる。風が私を通り抜け、清々しい振動を与えてくれる。しかし私は何一つ要求されたことはない。
粘土はポカンとし、そうですねと答えた。
次は地面を指し、土は私に養分を与えてくれる。ミミズが酸素を根に渡してくれ、水が蓄えられる土に変えてくれる。
しかしミミズも土も何も見返りを求めない。
わたしはここに50年座っている。しかし幸せじゃないと思ったことは一度もない。
粘土は驚いた!幸せじゃないと思ったことすらないなんて不思議で仕方なかった。
じゃあ桜木さんは不幸を知らないんですか?
そうだな。不幸なんて滅多にお目に掛かるものじゃない。そこにいる岩も、空気も、散歩している犬も、虫も、裏庭の小川も、そこに住む魚も、誰からも不幸に悩まされているなんて聞いたことがない。
ただ、人間だけが不幸を口にする。
粘土は目を見開いて、えっ!と声を上げた。
てことは、僕は人間なのでしょうか?
桜は笑った。そうかも知れないが、わたしの目には、君は粘土のように映っている。
粘土も頷いた。そうです、粘土ですよね。
じゃぁ僕は人間以外で唯一不幸を体験してるのですか。
桜は答えた。そうかも知れないね。
粘土は飛び上がって喜んだ!
やったぞ!僕は不幸を体験してるんだ!こんなに凄いことはない!
桜が囁く。幸せを見つけたようだ。
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