7歳の時、「お母さん、そこの美容院に行ってくるから、あんたたちここで（ファミレス…

7歳の時、「お母さん、そこの美容院に行ってくるから、あんたたちここで（ファミレス）ご飯食べてて」と母に言われ、千円札2枚を渡された。正直私はイヤだった。子供ながらに（7歳と5歳の子供2人で飲食店に入るなんて有り得ないだろう）と思ったが、そんなことを口すれば、母から怒られ、頭を叩かれるのが分かっていたので、我慢した。そして母は、2コ下の妹と私を残して、美容院に行ってしまった。その頃、母はスナックで働いていて、仕事に行く前に美容院で髪をセットし、その間、僕たちにご飯を食べさせなければならなかった。
ファミレスの入り口の前で、僕は少し躊躇していた。こんな小さい子供2人で入店したら、店の人はどんな顔をするだろう。「何？この子たち。親はいないのかしら？」と、怪訝そうに思うだろう。でも、早く店に入ってご飯を食べないと母に叱られるという思いから、思い切って店のドアを開けた。
恥ずかしかった。惨めだった。
が、僕の心配はよそに、ウェイトレスのお姉さんは、「いらっしゃいませ。お2人ですか？」と、変な顔をすることもなく、優しい笑みで出迎えてくれた。僕はちょっと拍子抜けしたが、同時にホッとした。ミートソーススパゲティを2つ頼み、妹と2人、無言で黙々と食べた。やはり親がいないことが恥ずかしく、惨めだった。周りの客は、口には出さないものの、「見て、あそこのテーブル、あんな小さい子供2人だけで食べてるわよ」と思っただろう。食事が終わり、会計をして店の外に出た。母はまだ美容院で、僕と妹は外で待っていた。冬だったので寒かった。暫くして母が来た。母は僕らの姿を見つけると、「外で待ってたの！？バカだね、店の中で待っていればいいのに」と怒った。そして親子3人、急いで帰宅した。母は僕と妹を家に送り届けると、仕事に行ってしまった。冬の17時はもう真っ暗で、また妹と2人きりの長く怖い夜が始まると思うと気が滅入った。

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